【読書感想】カフカ断片集『法の前に』――自分だけの門に気づくということ
カフカ断片集に収められている短編に、『法の前に』という物語があります。
わずか数ページの短い話ですが、とても感慨深く、そして少し怖さも感じました。
■ あらすじ(※ネタバレ含みます)
一人の男が、「法」に入ろうとして門の前に立ちます。
門は開いていますが、そこには門番がいて、中へ入ることをなかなか許しません。
男は門の前で、長い時間をかけて待ち続けます。
門番に話しかけたり、高価な持ち物を渡して買収を試みたりもしましたが、それでも男は法の門をくぐることはできませんでした。
そして年老い、ついに死の間際、門番はこう告げます――
「この入口はおまえのためだけのものだったんだ。」
カフカ断片集『法の前に』より
■ この言葉に感じた、衝撃と怖さ
この最後のひと言に、衝撃をうけました。
??「じゃあずっと入れたの?」「なぜ彼は中に入らなかったのか?」と、読んだあとに問いが頭を巡ります。
男は門の前で待ち続け、行動していないようにも見えますが、実は彼なりに努力はしていました。
門番に頼んだり、贈り物をしたり、話しかけたり……。
でも結局、彼は自分の判断で門をくぐるという選択をしなかった。
■ 門とは何か?チャンスと選択の象徴
私には、この「門」が人生におけるチャンスや自分だけの道の象徴のように思えました。
門はずっと開かれていた。
門番も、実は「入ろうと思えば入れた」ことを匂わせるようなことを言っています。
にもかかわらず、男は入らなかった。
なぜか。
おそらく彼は、「誰かが許してくれるまで待とう」と思っていたのかもしれません。
あるいは、「正しい時機」が来るまで、ずっとその場にとどまっていた。
でも、その「時」は一度もやって来ず、命の終わりが先に来てしまったのです。
■ 自分ならどうするだろう?
読みながら、私はふと「自分ならどうするだろう?」と考えていました。
人生において、「これは自分のチャンスかもしれない」「今動くべきかもしれない」と思う瞬間はあります。
でも、不安や恐れ、「まだ準備ができていない」という思いで、行動を先延ばしにしてしまうこともある。
もしかしたら、あの男と同じように、私は自分だけの門の前で立ち止まっているのでは?
■ この物語から感じたこと
この物語は、私たちが「他人の許可」や「完璧なタイミング」を待ちすぎることの危うさを象徴しているように思います。
人生には、自分にしか通れない門がある。
でも、それに気づいて進むには、自分の心の声に耳を傾け、「こわくても一歩を踏み出す勇気」が必要なんだと感じました。
……あくまで私の勝手な読み取りですが、そんなふうに感じました。
■ 最後に
「誰でも入れると思っていた門が、実は自分だけのものだった。」
この言葉の意味を考え続けることで、自分の人生における選択やタイミング、そして「行動することの責任」について、改めて考えさせられました。
『法の前に』はとても短い物語ですが、一人ひとりに問いかけてくるものがあるように感じました。

読んだことがない方は、ぜひ手に取ってみてください。
自分にとっての「門」について、少し立ち止まって考えてみるのもいいかもしれません。
▶カフカ断片集:
お読みいただき、ありがとうございました。
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