高校生の頃の話
高校時代、友人たちの間で流行っていたのは、幽霊屋敷やいわくつき物件、自殺の名所など、“寒気のする場所”を巡ることだった。
その中でも、特によく噂にのぼっていたのが、地元で有名な“いわくつき”の一軒家だった。
その家には、こんな恐ろしい話が語り継がれていた。
「一家の大黒柱だった父親が、突然発狂して家族全員を殺害。その後、自らも命を絶った」という。
都市伝説のような話だが、こんな“ルール”まで語られていた。
「門が開いていたら入っていい。閉まっていたら、子どもが現れてこう言う――
『今、お父さんがお母さんを殺してるから、入らないで』」
放課後、4人の友人たちとその『いわくつきの一軒家』へ行ってみようという話になった。
目的地に着く頃には夕方になり、あたりはすでに薄暗くなっていた。門は……開いていた。
「入っていいってことだよな」
そう言いながら、私たちは家の敷地に足を踏み入れた。
周囲は森のように木々が生い茂り、建物は草に覆われていた。玄関の扉は開いており、中も見るからに朽ちていた。
恐る恐る中を覗いたが、特に何も起きることはなく、安堵した私たちは外に出て、周囲を散策した。
すると、外階段があり、屋上へと続いていた。
私は妙にワクワクして、登ってみることにした。他の友人たちは止めたが、私は聞く耳を持たなかった。
屋上に上がると、屋根の四隅に、なぜか土が盛られていた。
「……なんだろう、これ」
少し悪ノリ気味に、つい、ひとつ……またひとつと、土を蹴り飛ばしていった。
すると友人Aが突然青ざめた顔で「ayaco、もう帰ろう……寒気がする」
一瞬、場の空気が重くなった気がした。
でも私は気にも留めず、さらにひとつ……またひとつと、土を蹴り飛ばした。
するとAは、たまらずこう言った。
「ごめん、先に帰る。気分が悪い……吐きそう」
そう言うと、足早に階段を降りていった。
友人Bも、慌ててAに付き添ってそのまま帰ってしまった。
私と友人Cはその後もしばらく屋上にいたが、小雨が降り始め、周囲は真っ暗になっていたため、早々に引き上げた。
夜、自宅で入浴を済ませてくつろいでいると、友人Bから突然電話がかかってきた。
「やばい! お前、大丈夫だったか!?」
「え? なにが?」
「……マジか。何もなかったんだな。よかった」
どうやら、帰宅後に母親が玄関で待ち構えていて、
「背中出しなさい!」
と言われ、塩の入った袋で何度も背中を叩かれたのだという。
何も話していないのに、「もう二度とあそこには行くな」と強く言われたそうだ。
さらに驚くべきは、友人Aの話だった。
「お前が屋上で土を蹴ったとき、すぐ目の前に“手招きする女”が立っていた」
彼はその姿を見た瞬間、恐怖で立ち尽くしそうになったが、パニックを避けるために“気分が悪くなった”とだけ告げて帰ったという。
「……怖すぎるだろ、それ」
私には何も見えなかったし、何も起こらなかった。
それが幸いだったのかもしれない。
でも、今でも思い出すたびに、背筋がゾッとする。

今思えば、なんて軽率だったのかと、あらためて背筋が寒くなります。
ああいう場所には、足を踏み入れてはいけない“理由”が、本当にあるのかもしれません。
今では、とてもあんなことをする気にはなれません。
お読みいただき、ありがとうございました。
このブログでは、40代からの心と体、気持ちの変化、日常の出来事、そして趣味について綴っています。

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